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sproutおぼえがき

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海の向こうからの手紙

4月3日
嵐のち薄日

雨のなか、遠くに住んでいる友人からの手紙がとどいていた。
ぬれないように細心の注意を払ってポストから取り出して、家に入っていそいで読んだ。
ちょっと前に送った出産祝いへのお礼と、近況、子どもとの新しい家族生活、病気で死んだ大事な猫の話などが書いてあった。

この友人とは大学で知り合った。
同じ音楽大学に通っていて、彼女は一年下で、音楽学を専攻していた。
わたしと同じに音楽にさして興味がないようにみえ、もっぱら写真を撮ったり絵をかいたり、芝生で本を読んだりして、ときどき長い時間をいっしょに過ごした。
びっくりするほど小さくて、不釣り合いに大きな目をして、手なんかもみじのようにちっちゃくて、彼女の姿を思い浮かべると、昔読んだ、猫がまちがえてクジラの引き出しをあけて、くじらの大きな翼を背中につけて飛ぶおはなしを思い出す。

一足先に卒業した私は図書館で働き始め、その1年後、彼女がピアノの勉強を続けるためにフランスに留学すると聞いて、びっくり仰天した。
ピアノがずっと大好きだったというよりも、もう一度好きになりなおして外に飛び出してったように思えた。

それからもう15年くらい、彼女はフランスでピアノを弾き続け、結婚して今は南フランスの小さな村で夫と音楽教室をひらいている。
彼女は絵が好きだから、教材や、紙芝居なんかも自分でつくる。それがまたとてもすばらしいのだ。

ひんぱんに更新してくれるブログで様子は知れるし、日本に帰ってくれば必ず会って話すけれど、そこでわかることはほんの少しで、いろいろあっただろうな、と思う。
ちいさい体で、フランスに、音楽に、双方の家族に、しっかりと根をはっている。
何度もいうけどうそみたいにちいさいので、一見夢みたいな存在に見えるけれど、ものすごく努力の人で、継続の人だ。
少しずつ、一歩一歩なんて、言うは易しでじつはほとんどの人ができないむずかしいことを、息をするように自然にする。
でもほんとうは、きちんと息をするようにちゃんと自分をしむけているから、できるのだ。

彼女の書く手紙も同じようで、ぜんぜんかまえたようなところがなく、便箋に向かって思いつくままに書いて、その日の内にうちまで届いたような気がする。
こちらのまわりの空気もゆらすようないい手紙だった。

封筒に貼ってあった赤い女神の切手がとてもかわいかった。
頭のまわりに大きな星が散っているので、女神のくせになんだかヒッピーみたいだ。
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by titypusprout | 2013-04-03 18:49 | Comments(0)
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