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sproutおぼえがき

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辻 恵子個展「K for KIRIE」

4月13日 土曜日
晴れ 気温高いが北風

昨日、切り絵の辻恵子さんの個展に出かけた。

辻 恵子個展
K for KIRIE
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西荻窪 ギャラリーみずのそら


壁に並ぶ、さまざまな紙から切り出された人のかたちは、命をふきこまれたようにいきいきとして見える。

孫悟空がじぶんの髪の毛を引っこ抜いてフッと息をふきかけると、小さな分身がキャアキャアと飛び出すというところや、陰陽師(マンガです)で式神がヒラヒラと主人の代わりを努める場面などと同様の光景が、辻さんのアトリエでは繰り広げられているんではなかろうか。

最後の一辺を切り落としたとたんに、後ろも見ずに走り出す小さな人たちを、辻さんはきびきびとつかまえては、手際よくひねって静かにさせる。
個展の会場はひっそりと静かだけれど、どうもそれは辻さんとその人たちとの力関係による契約でもって、成立しているような気がする。

飄々とした文章もすてきな、お顔も知らない辻恵子さんのイメージは、すっかり涼しい顔をして彼らをたばねる小さい人界の女頭領になってしまった。

包装紙や、写真や、レタリングの文字や、切手など、辻さんの作品の材料となるありとあらゆる紙の、そこに描かれた模様をわたしたちは普段、この線は花の輪郭、この色は花の色、と認識しているわけだけど、辻さんにかかってはそれらはいったん解体されて、そこにあるのはゆるくカーブを描く一本の線であり、または赤と黄緑の色彩の境目である。
そして、ここは手首の袖の部分、ここは小さなシューズのつま先、と新しい概念が与えられたのち、紙はふたたびもとの花の絵にもどってゆく。くるりと人のかたちにくりぬかれた空間と、紙の端からの一本の細い導入線を残して。
その作業は、なんだか文章の校正作業によく似ている。

いったんそうした目が開かれてしまうと、それ以降何をみるにつけても、その中に切り出されるのを待っている人のかたちが見えてきてしまうものなんだろうか。
キャベツの葉のかさなった部分や、雨の日のガラスの模様などが、みんなそういうふうに見えてくる日常があるかと思うと、おもしろいが因果なものだとも思う。
世界のみえようは人によってずいぶん違うんだな、と、へんに大きなことを考えてしまった。


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みずのそらで買った、五月女寛さんというひとの作った家。

by titypusprout | 2013-04-13 20:22 | Comments(0)
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