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sproutおぼえがき

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こけしの店

4月21日 日曜日
雨のち曇り 凍える寒さ



今日、福島の土湯は大雪らしい。
この土日に「土湯こけし祭り」が行われているそうだ。
一度行ってみたい。

2ヶ月ほど前に、都内のこけし店に行った。
はじめての赤ちゃんが誕生した友人に、ぜひえじこのこけしを送りたいと思い、こけしに詳しいAさんに聞いたところ、第一におすすめの店として教えてくださったのがここだった。
Aさんはこけし好きが高じてご自分でもこけしを作ってしまうほどのこけし専門家なのである。
幸運にも一緒に行ってくださると言ってもらったので、嬉しくなって心強く出かけた。

祐天寺の駅で待ち合わせをして、そこから歩いていった。
あらかじめ電話で伺うことを伝えた際、電話口でものすごくか細い声のおばあさんが、
「うちは普通のしもたやですのでね…もしわからなかったらお電話くださいませね…」
と詳しい道順を教えてくださっていた。
その甲斐なく道を一本間違ったが、着いたそのお家がほんとうに普通の平成のお家だったのでびっくりする。なんとなく、古い民家か、昭和中期の一軒家を想像していた。
インターホンを押して名前を告げ、玄関をあけると、そこがもうお店だった。
というより普通のお宅の玄関ホールと、2階に続く階段部分に、ところせましとこけしが並んでいて、それがお店なのだった。

お電話のイメージ通りのちいさくてやさしそうなおばあさんが、店主のTさんだった。
Aさんとは2年ぶりくらいの再会ということで、親しくご挨拶をかわされていた。

Tさんは、最近首を痛められたとのことで、首にギプスをあてており、こちらからお顔がみえないくらい腰をかがめていらして動くのもつらそうだったが、座る場所を作ってくださったり、お茶を入れてくださったりと、なにかと気を使ってくださった。

Aさんはさすがに詳しく、ご自分の好きなこけしを素早く見つけ出して、私の質問にもなんでも答えてくれる。
私はこけしについてはまったくの門外漢で、それでも時間をかけて見ていくと、自分の好みが少しずつわかってきた。
当たり前だが、ずらりとならんだこけしたちは同じ顔がひとつもない。
おもしろいのは、何度も行きつ戻りつして見ていると、それまでは流していたあるひとつのこけしが、急にだんぜん好ましく見えてきたりすることだった。
きれいな顔のこけしが目を引くとも限らないし、顔なんかちょんちょん、棒一本のとぼけたユウモア系こけしのなかでも好きなものと嫌いなものがある。(もちろん自分にとって、ということだけど。)
そして、なんだか知らないが、顔といい、たたずまいといい、ぜんぜん派手じゃなくてむしろもの静かな村の女といった風情なのに、とんでもなく過激な感じのするこけしもあって、度肝を抜かれた。(すっごい高かった…。)

お目当てのえじこのなかから、一番気に入ったものを選んだあと、自分のためにちいさいこけしを2体選んだ。
離れた場所にあった2体をたまたま隣に並べてみたら、にわかにこの2人の娘のバックストーリーが頭に展開しはじめて、もうこれしかない感じになってしまった。

2人の娘は貧しい寒村に生まれて、年頃になったのでこれから女衒といっしょに町にゆくのである。
2人は村の小学校に通った同級生で、女衒が村をまわってきた際自らすすんで募集に応じた。
実家に女学校に行かせる金はないし、村には働き口もないからである。
ひとり(よしえ)はあまり頭はよくないが、体力があり、楽観的な性格だ。
「やっぱあたいたちがいっちょがんばんなきゃね!」と、この先の運命についてはあまりよくわかっていない。
もうひとり(さとこ)は村では知られた美少女で、頭も聡く、今後の自分の仕事についても十分に理解しており、恐れと同時にひそかな期待のようなものも抱いている。きっと売れっ子になるだろうことを、どこかで知っているような娘である。
よしえも持ち前の性格でほどなく環境に順応し、たくましく人生を生き抜いていくことになる2人であった。

というストーリーである。馬鹿でしょうかね…。
聞いてみると、この2体の娘は産地もぜんぜん違うとのことで、同じ村の小学校に通えるはずのない2人なのであった。
知らないってこれだからおそろしい。
やさしいAさんは、知らないだけに自由に組み合わせたり物語を想像したりするところが新鮮でおもしろい、と言ってくださって、一緒に妄想話で遊んでくれた。

店主のTさんも、私の馬鹿話を聞いておられたと思うが、ほっておいてくださって、選んだこけしを「まあ…かわいいのをお選びくださって」と言ってくれた。
おふたりのおかげで、このすごい店で気後れすることなく、のびのびと楽しくこけしを選ぶことが出来て、とても有り難かった。

こけしの世界はほんとうに奥深くて、本も沢山出ているし、産地や工人さん、その系図と、知れば知るほど終わりがないものらしい。
そして真の愛好家は、自分ーこけし/こけしー自分と一体のこけしと対峙して、無駄口をたたいたり、ましてや妄想を語ったりしないそうである。
そして伝統か伝統じゃないかということが、とても大事な要素であるとのこと。
それを聞いてもしやと思ったが、やっぱり愛好家の多くは男性だった。

それを聞いて、わたしの楽しみ方ってまんま女児が人形遊びしてるのと変わらないじゃん…と思った。
それはそれでこけしにとって本望のような気もしてしまったが、やっぱり好きな工人さんがいたり、好みのこけしの特徴や産地について知ったり、実際その場所に行ってみたりすればもっと楽しいに違いないなあと思う。
Aさんが「工人さんってものすごく沢山いるし、系図などもやっぱり全部知りたいじゃないですか」とさらっと言っていて、自由なこけし愛好家のように見えるAさんがそんなことを言うなんて!格好いい!と思った。
さすがレコードのターンテーブルをろくろに見立てて絵付けをする人だけあって、探求の徒だ。
こけしの選び方も、早くから好みのこけしを幾つか選び出して、すっかりそれに決めたかと思っていたら、最後の最後にこれは!という一体を見つけた途端、今までのはぜんぶあきらめてそれだけを買ったのが見事だった。

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左がさとこで右がよしえ
by titypusprout | 2013-04-21 21:30 | Comments(4)
Commented by caco_mama at 2013-04-21 22:00 x
あたいの特技は健康!体だけは丈夫ったい !的なよしえ...(笑)
高校のころ、福島(だったかなー?)に2年生の研修旅行で行ってコケシ作ったのよ。でね、職人さんが選ぶベスト3に選ばれたのよアタイ...あれどこいっちゃったんだろか。
壇上に上げられ、上手くかいたコツは?といったような学年主任からの質問に「.......別に」と
答えて会場がシーーーーーーンとなり主任がそっかそっかみたいに笑っていたのを思い出した。
思春期ど真ん中だわね。。。
Commented by titypusprout at 2013-04-22 08:49
えー!そのこけし見たーーい!
「………別に」って十代の専売特許だよね(笑)学年主任もさすがに工人さんの前では笑うしかなく、つらかったであろう(笑)
よしえはあまり深く考えない性格がかわいがられて、売り上げは今イチだが仲間うちではムードメーカー的な存在に。そしてまたたくまに看板娘にのぼりつめるものの、もの静かで口べたなために誤解されがちがちなさとこをかばうやさしい一面もあります。「さとちゃんはオラと違って頭ええもの」が口ぐせ。肌の黒さを気にして、休みの日に町で買った「肌が白くなるクリーム」をこっそり試している。
Commented by エリコ at 2013-04-23 00:44 x
そんなすてきな所からやってきたのね〜、我が家のこけしさん!
うちではめぐちゃんと呼んでるよ。おかっぱ頭と遠くを見つめる瞳が学生時代のめぐちんによく似てるもの!
さとこの横の子もちっこくてかわいいね。
Commented by titypusprout at 2013-04-23 08:51
エリちゃん
え…?あたしがえじこに入ってあなたたちを見つめてたらそりゃシュールでしょうが…(笑)
さとこの横のきいろい子は、同行してくれたAさんの作ったこけしだよ!
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