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sproutおぼえがき

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美容院の雑誌

5月15日 水曜日
晴れ 風やや強いがさわやか


半年ぶりくらいに美容院に行く。

髪など、のびてくるとすぐに結んでしまうので、ほっておくといつまでも行かない。
でも最近は白髪を染めるということもしなければならないので、一年に何回かくらいはちゃんと通っている。

ここ数年、久しぶりに行くと担当のHさんが、
「おひさしぶりですーーー。まーた、空いちゃいましたね(期間が)。笑」
と冗談ぶって叱り、
「すみませんーーー、でへッ」
と私が舌を出して謝る(ほんとには出してません。)
という茶番が繰り返されている。

Hさんによると、お客さんのなかには毎月美容院に通う人も少なくないらしい。
よっぽどショートの人か大内順子でもない限り、そんなに何を切っているのか。

髪の毛にも手を抜かない自分、とか、そんな自分を感じるための時間、などが目的なのだろうか。
などと意地悪なことを考えたが、そもそもネイルサロンなどにも一度も行ったことがない私にそんなことを推し量る資格はないのだった。


ところで、私は美容院で雑誌を読むのがとても好きだ。
というより、今日は何の雑誌を手渡されるのだろうということがひそかな楽しみになっている。

女性誌の世界は、政治政党に似ている。
右は自民から、左は緑の党まで。脇には独立派の少数政党が独自の路線を。
そして、多くの女性はその外見とたたずまいで、どの雑誌に属するかを判断できるということになっている(らしい)。

私が行っている美容院は、どの駅前にひとつは支店があるような、Aで始まってHで終わる3文字の、ちなみにいうと中の文字はSですというそんなチェーンでして、置いてる雑誌のバリエーションも、仮にモード系(0)←→コンサバ系(100)という軸で考えるとすると、無難に45〜85あたりを置いているようなところです。



さて、今日の雑誌は、「VERY」とまさかの「STORY」(!!)だった。
そして3冊目に絶妙にHanakoが紛れ込ませてある周到ぶり。



「VERY」は、ちょっとおハイソな30代のための、ママで、妻で、かわいい女もあきらめない!という、そんなコンセプトのコンサバ雑誌で、誌面ではおハイソな読者ママたちがその美と生活ぶりを競いあい、その横に年齢ばかりか在住地が記載されているんだが、そのほぼすべてが東京23区西側という主義主張に一ミリのブレもない雑誌だ。
そして、「VERY」誌上でVERY読者をdisるという、世にもめずらしい戦略を展開している。

小島慶子にコラムを持たせている時点でじつに確信犯的なわけだが(ちなみにそれを教えてくれたのは友人のMさんだ。)、私が読んだ号ではさらに、内田樹×高橋源一郎、小島慶子×六角精児、西原理恵子×桐野夏生というかなりツボな対談をセッティングし、「VERY」について語らせていた。
内田樹は「ここに載ってる読者モデルを見て、私これより上だわ、と思うような人はこの雑誌を読んでない」と指摘し、西原理恵子は「VERY」の正体を「女の脅し商法」と斬り捨て、小島慶子に至っては、「きれいにして子ども連れて公園行って、ベンチで昼休みとってる若い男に「こんな奥さん欲しいなー」と思わせ、その視線を感じて「でしょ?でもだめよ。わたしはもう人妻なんだ・か・ら♡」というのが「VERY」読者なんですよ」とまで言い放っている。(ちょっとうろおぼえだけど…)
進行役の人(たぶん編集部の人)も、「VERY読者は家事も子育ても美もぜんぶに手を抜かずにがんばっている人たちなんですよ」という合いの手など、完全に煽ってるとしか思えないんである。


Mさんや私同様にVERYにいちいちつっこみを入れながら読んでいる立場からするとものすごく面白いけど、実際の読者層(「VERY」的生き方に憧れ、それを目標にしている人たち)はこれをどう思っているんだろう、と興味深く思っていたんだが、今日思ったことは、これが「VERY」の考える「かしこさ」なんだろうな、ということだった。

つまり、「私たち、自分たちを客観的に見てかつそれを笑えるくらい冷静で、みんなが思ってるほど決してバカじゃないんですよ。」という主張。
内田樹は対談のなかで「読者と誌上のモデルはイコールではない」ということと、雑誌のコンセプト「強く、優しく、美しい」に「かしこい」が入っていない、ことを指摘したけど、「VERY」は、そんなのはなからわかってますよ、これが私たちの「かしこさ」で「勝ち方」ですよと言っているのだった。

じっさい、VERY読者はけっこういい女子大でて、結婚するまではわりといい会社で働いてました的な、頭のいい人多い気がする。でも「頭がいい」ことを見せるのは、たぶんVERY読者的には「かしこくない」んだろう。

こういう企画は、自分(たち)は頭がいいと芯から思って疑わない人たちばかりの「天然生活」的誌上には絶対に登場しないんだろうなー。
言われる前に言うと、はっきりいって自分を顧みてこのようなことを言っています。


で、VERYで時間を取りすぎて、STORYを読む時間がなくなったのが残念だ。

しかし平日の昼間に美容院来てる30代後半既婚というともう「VERY」しかないんか。
「MART」よりはましか…。
ていうか別にいらないけどとりあえず「oggi」とか「LEE」とかだった時代も過ぎ、それはもういいけどせめて「InRed」くれよと思う私であった。

けっきょく若く見られたいっていうことでしょうか。
by titypusprout | 2013-05-15 23:29
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