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sproutおぼえがき

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記憶のえほん

6月15日 土曜日
晴れ 暑い 蒸し暑い


数日ぶりの晴れ間。大量の洗濯物をいっぺんに干す。


小さいころ読んだ本で、長いあいだどうしてもタイトルが思い出せない本があった。

わかっているのは
・翼のあるくじらと猫のはなしだ
・引き出しのなかに翼が入っていて、猫がくじらの引き出しをまちがって開けて大きな翼をもらう
・草原の椅子と金色の糸

タイトルの一部も、書いた人の名前も思い出せないけれど、けっこう内容はおぼえている。
そして鉛筆画のような繊細な挿絵。

図書館で働きはじめて、児童室に配属されたころに思い出し、何人かの司書たちに聞いたけれどだれも知らなかった。
インターネットでもずいぶん探した。
キーワード:くじら、猫 翼、羽 金色、椅子…
カタカナにしたり漢字にしてみたり、さまざま試行錯誤をくりかえし、もうかん子に聞こうかとすら思ったけど、そのうちあきらめて、しばらく忘れていた。

職場も変わって、ときどき思い出したように同僚に「知らない?こーいう本。」と聞いては、予想通り「知らない」という答えをもらって「だよね。」とおさめるという10数年。


そして1年前くらい、ふと思い立ってもう一度検索してみたら、あった。

OKwave の質問でだれかがまさにその本について聞いていて、別の誰かが答えていた。

「たちばなみどり著 「くじらのバァオ」(アリス館牧新社)だと思います。」

でた!!!!

投稿日時は2006年…(しばらくどころかだいぶ忘れてた)

職場の図書館では所蔵していなかったが、地元の図書館になんとあった。
予約→取り寄せ→取りに行けずキャンセル→また忘れる…
…思い入れのある本なんじゃないんか。

でも今日ついに、借りてきた。
そんで読んだ。
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いろいろ覚えてたーーーーーーーーーー!

くじらのバァオが最初しっぽで立って歩いてくるとことか
門番のヤギとか(門番だけに名前はモーバンだ)
引き出しから翼をもらうと、引き出しのとびらに模様をつけるってこととか
バァオと猫(ミュータ)が出会うとき、「ぼくバァオ(ミュータ)、それぼくの羽根だろ。」って2匹同時に言うとことかーーーー

おどろくほど、内容だけじゃなくて言葉の言い回しそのものを覚えている。
この先なんて言うのか一瞬先に知っている、デジャヴみたいな感覚に目の前がくらくらする。

このお話は、死んでしまった子どもたちが行く国のはなしだ。
雲の上には門番(ヤギのモーバン)がいて、自分のためだけの引き出しが用意されている。
それをあけると翼がもらえてどこにでもいける。

わたしも子どもごころに、そういう話なんだなってことは知ってた。
だから、大人になってこの本のことを児童書に一家言ある司書に話すと、「なにその本…」ってまゆをひそめられたりもした。
ある司書には「ろくな本じゃないな(笑)」て一笑に付されたし…(ちきしょう)

たしかに、はっきり「死んだ」と書かれてはいないんだけど、
「みんなとはぐれてしまい、波打ち際に打ち寄せられたとこまではおぼえてるけど、気が付いたらここに来てた」とか、
「自分のいた海にいってみたけど、だれもじぶんに気が付かないみたいだった」とか、
「先住の動物たちはみんなわかってて、まだ気付かないバァオをやさしく見守る」とか、
そういう描写が記憶してたよりだいぶあからさまにあって、図書館員としてわたしが初めてこれを読んだら、正直、まあ、おすすめ本にはしないだろうな、っていうふうには思う。

でも今日30年ぶりくらいに読み返してみると、そういう「死後の世界」を示唆する具体的エピソードはほとんど覚えていなくて、バァオが家族に会いに海にゆく、物語的には最重要なシーンなどもまるですっぽり記憶から抜け落ちている。
強烈によみがえってきたのはただ、引き出しの重厚で大きい感じ、水の粒があつまってできた雲、大きな翼をせおうバサバサした毛並みの子猫、空から降りてきた金色の棒がおなかに吸い付くひんやりした感触。
感触、温度だけ。

この感触を、わたしは長いあいだ、自分のけっこう大事な場所に抱えてきたんだなあと思う。

だれもが認める名作でも、通な一冊でもなくてかっこわるいけど、記憶のえほんと言われたらこれと言う。
笑った司書にもわるいけどね!


いっこだけこの本ですごい記憶間違いをしていたところがあって、
それはバァオが草原を歩いていると椅子があって、空から金色の棒が降りてくる、というシーンで、その場面、私の記憶の中ではもうこれで天国にいくってくらいの最後のハイライトだったのだが、じっさいは最初のシーンで、その棒をつたって上の雲の国にいくとこから話がはじまるのである。

棒をつたって天国へ(成仏)って、あんたそれじゃ蜘蛛の糸じゃん…。



『くじらのバァオ』
 たちばなみどり/著
 アリス館牧新社 1976
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by titypusprout | 2013-06-16 00:23 | Comments(2)
Commented by うさみ at 2013-06-16 01:31 x
よかったね!
ついに見つかったか〜(^。^)
これ初めて見た(聞いた)本だー。

イイね〜すんごい前に読んだ本をまた手に取る瞬間て。しあわせの反芻だな、いい。
Commented by titypusprout at 2013-06-16 22:32
うさみサマ
そうなの〜。OKwaveで聞いてくれた知らない人、ありがとう!
図書館でもぜんぜん見ない本でしょう?(笑)

読んでいてなんだか不思議な感覚だったですよ。自分の脳内がコントロールできない感じで。
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