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sproutおぼえがき

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『LOVELESS』

7月6日 土曜日
晴れ  暑い!


暑い。
関東甲信越の梅雨は明けたらしい。
この日差し、空の感じ、空気。そうだろうよと信じるしかない天気だ。

ねこらもごろごろと転がっている。
スマは最近、後ろ脚を伸ばして伸びをする、からのお腹をそのまま板の間につけてヘタリ、という新たな寝技を編み出した。
ねこにも個人的な流行りらしいものがある。

梅雨明けがこれだけ早いと、丸2ヶ月は真夏か。
夏は好きだが暑いのはこたえる。
風のある日が多ければうれしいんだがなあー。
しかし秋風がふけばだいぶんまた不安になるだろう。


『LOVELESS』(桜木紫乃/著)を読んだ。
現代…従姉妹同士の理恵と小夜子、過去…2人の母である百合江と里実をめぐる家族の物語。
以前本の目利きのMさんがおもしろかったと言っていた本。

故郷の秋田を捨て、夕張の炭坑、そして標茶の開拓村へと流れていくどうしようもない一家に生まれた百合江と里実の、必死に生きた数十年と、現在老いて死につつある百合江のもとに再会した理恵と小夜子、そして百合江の妹の里実の今が交互に語られる。

16のときに町に来た一座に突如弟子入りし、それから流されるままに人生を生き、小さな公営住宅の一室で70代にして老衰と言われ死の床にある百合江。つねに先を見すえて今を耐え抜き、ついに人生を勝ち取ったかにみえたにもかかわらず、時代の流れに足下をすくわれたかたちの里実。

母親(里実)の愛情を感じずに育ち、42歳にしてだらだらと関係を続けてきた男の子どもを妊娠する小夜子。母親(百合江)の過去の行為を許せず、関係が断絶したままの小説家の理恵。

4人はそれぞれが、自分の目のみで相手をみていて、結局最後まで分かり合えない、そもそも分かろうとなどしていない。
過去を掘ってもにごった水しかでないような、救いようのない家族。
にごった水の中に沈んだまま死んでいったもの、これから死んでゆくもの。
交互に語られる過去のなかに浮かび上がる真実も、読む私たちには届いても、彼らには届かない。

でも、そんな救われない人生に、不思議な輝きだけはある。
甘え、憎み合う彼らもそれだけは感じないわけにいかないように思えた。
それを尊厳とよぶのかどうかはわからない。

なんとなく、心が弱っているときに何もこんな本を、と、手元に置きながらしばらくほっておいた本だったが、不思議と読後に力がわいてきた。

結局人生なんて、目の前にやってくるさまざま、そのときの反射神経で選んでいくしかないんじゃない、と。
行き当たりばったりのように見える百合江の壮絶な人生と、歯を食いしばってその場にとどまることを選んだ里実の辛苦と、どちらも地獄だけれど、里実の閉じた地獄はより重くて苦い。
百合江のそれのほうにどうしても気持ちが寄り添い、軽やかさや甘ささえ感じてしまう。
そんなのにちいさな幸せ見出してるから、あんたいつまでも不幸なのよ、とまっとうな人になら叱り飛ばされそうな類いの。

せいぜいそのときがきたら悩んで、どんな末路でもこの世の最後に残るのは甘さ、っていうんなら、どんな人生も許される気がする。

こんな、まったく参考にならない人生にあふれた本に、背中を押されることもある。
小説の力を感じた本だった。


そういえば、以前読んだノンフィクション、『ミドリさんとカラクリ屋敷』のミドリさん一家も新潟から村ごと北海道に開拓団で移住した。
ミドリさん一族は開拓でとても成功した組。
ミドリさんの人生も、ご本人の生来の性格もあいまってそりゃあ波瀾万丈だが、こちらは大陸的にあっけらかんと明るい。
以前職場の図書館の特集コーナーで、「なんかすごい人」っていうテーマを組んで紹介したんだった。

「北海道、激動の人生」でひとつ特集が作れそうだ。


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LOVELESS
桜木紫乃 著
新潮社  2011
ISBN-13: 978-4103277224


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ミドリさんとカラクリ屋敷
鈴木遥 著
集英社  2011
ISBN-13: 978-4087814774
by titypusprout | 2013-07-07 00:16 | Comments(0)
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