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sproutおぼえがき

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遠い町からの本

7月23日 火曜日
曇り じっとり 暑さ戻る



夏のせいか、家にばかりいるからか、倦怠感がすさまじい。
日にちの感覚も消え、友人との約束をすっぽかし、たいへんな不義理をした。

参議院選挙は予想していたことだけれど、自民党が勝った。
この人たちが受かったら日本の政治っていったい…と思っていた面々もおおかた当選。いったい…。


数日前、くすみ書房から2冊の本が届いた。
『ジーノの家 イタリア10景』(内田洋子/著)と『ゲイルズバーグの春を愛す』(ジャック・フィニィ/著)。

くすみ書房は札幌郊外の大谷地というところにある町の本屋さんで、少し前にその「友の会」に入ったので、その第1回めの配本だった。
会費は1年間で1万円。年に数回、くすみ書房が選んだおすすめ本が送られてくるシステム。それと毎月出している「くすくす」という会報もついてくる。
その他に、お店の文具部の商品の割引、お店でイベントなどをやるときに特典などが付いている。

入会したきっかけは、知っている人も多いと思うけれど、twitter上でリツイートされてきたツイートだった。
くすみ書房がなくなるかもしれない、と書いてあった。

くすみ書房は、さまざまなおもしろい取り組みをしている町の個人書店として、本屋好きのあいだではけっこう有名で、私も行ったことはないけれど、豊崎由美さんの書いたものなどを通して知っていた。
東京でいったら、千駄木の往来堂書店や吉祥寺のブックスルーエみたいな感じかもしれない。

そのツイートの出所は、くすみ書房の店主のお嬢さんで、貼られていたリンクを読むと、今月中に支払いができないとおそらく確実にくすみ書房は閉店してしまうだろうこと、それを助けるのにもっとも効果的な方法は、一度に資金を集められる「友の会」に入会してもらうのがいちばんいいということ、などが書いてあった。

正直言って、1万円はけっこう高い。そのなかには送料も含まれるから、実際送られてくる本の総額は7千円くらいだという。
他にもたいへんな本屋さんはいっぱいあるのに、いっときの情にかられて行ったこともない本屋さんだけを助けようってどういう偽善。
わざわざ送料を負担して遠くから本を買うって変じゃない。それに文具割引や講演会の恩恵は受けられないよね。
しかもその本がおもしろいかどうかなんてわからないじゃない。
と、あたまの中には「頭を冷やせ?」といさめるまっとうなひとたちもいて、とりあえず数日考えようと思ったけれど、頭のなかではもう決めていて、結局申し込むことにした。

まず、送料3千円は東京で年に数回電車にのって本屋さんに行くのとそう変わらない。
1年間に本に使う金額を考えると、7千円くすみ書房に使っても、地元の好きな本屋さんで買うのにそう影響するとも思えない。

どこの本屋さんもほんとうに苦しくて、こうしている間にも全国でどんどん町の本屋さんはなくなっていく。がんばっている本屋さんはくすみ書房だけじゃないと言われればそうなんだけど、くすみ書房の場合、今回この経営危機のことががあっというまにすごい数の人に共有されて、わたしんとこなんかにも届いた、そのことが今までこの本屋さんのやってきたことのすごさを伝えていると思ったし、そもそもサイトを作って拡散するっていう行動を起こしたっていうそのあきらめなさが(それが最初はお嬢さんからの発信だったとしても)サポートに値すると感じる。

だから、じっさい私はこの本屋さんに行ったことはないわけだけど、こういう本屋さんがなくなるような世界はいやだよー、と強く感じ、この本屋さんが選んだ本ならぜったい面白いだろうと思って、それで入会を決めた。
遠くの町の本屋さんでも、そこが好きならこういうかたちでお金が落ちるようにできる方法があるんだな、って気づいたこともよいことだった。

なんて、じぶんの頭のなかの人にこんな風に反論している自分はまったくばかみたいだ。
結局、だれだって見えるものしか助けることはできない。そして、なにもせずにそれがなくなってしまったと知ったら、どんなにか後味の悪い気持ちになるだろうと思った、それだけなのかもしれない。

それから、友の会の「自分で本が選べない」システムにすごく惹かれたというのも大きい。
さいきん、本に限らずだけど、自分のアンテナだけで何かを選ぶことにつまらなさを感じるようになってきた。
本屋さんに行って、ぶらぶらとおもしろそうな本を選ぶのも大好きだが、やっぱり脳が勝手に私の好き(そうな)本を取捨選択してとらえてくるので、どうしてもかたよってしまう。
全然ちがう赤の他人が、勝手に選んで送りつけてくる本というのがものすごく魅力的に感じた。

実際には、10冊ほどのリストが届いて、その中から1〜2冊(値段によって)選ぶというシステムのようなのであれっと思ったのだったが、考えてみれば「もう持ってるよ!」ってことになりかねないからそれはそうだよな、と思って、リストのなかで「あ、これ気になってた」という本じゃなくて、全然聞いたことない、自分じゃ絶対ひっかからなかっただろうけど面白そうと感じた本を選ぶことにしようと決めた。それなら地元で自分で選んで買う本とかぶらないし。

それで送られてきたのが、上の2冊。
今『ジーノの家』のほうを読んでいる。
イタリア在住のエッセイスト内田洋子さんの、数十年のイタリア暮らしを綴ったエッセイ。
一章一章がびっくりするほど鮮烈で、スリルに満ちていて、エッセイなのに手に汗握り、息をのむようにして読んでいる。
内田洋子さん、私にとって内田といえば光子(ピアニスト)で、洋子と名のつくエッセイストは何故か数えきれないくらいいる。
それで聞いたことあるような気がしてしまったがまったく初めての作家だった。大当たり!!
前作、『ミラノの太陽シチリアの月』(小学館)も「くすくす」で絶賛されていた。

イタリアについて書いたエッセイには印象深いものが多い。
須賀敦子の随筆、村上春樹の『遠い太鼓』も何度となく読み返す。


くすみ書房に「友の会」制度がなく、インターネット上でこの本屋さんから本を買ってサポートしようって呼びかけだったら、ここまで興味を引かれたかはわからない。慈善じゃないから。
自分以外のものにポンと乗って、ばくち気分で、それも遠くの町から郵便でやってくるというのがいい。


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『ジーノの家 イタリア10景』
内田 洋子/著
文藝春秋 (文春文庫) 2013
ISBN 978-4167838492


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『ゲイルズバーグの春を愛す』
ジャック・フィニイ /著 福島 正実 /翻訳
早川書房 (ハヤカワ文庫 FT 26)  1980
ISBN 978-4150200268


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こんなかわいいカバーがついてきます。電車で見せびらかしながら読んでいる。

くすみ書房のHP
とりあえず今回の経営危機は脱したそうです。よかった。
by titypusprout | 2013-07-23 18:04 | Comments(2)
Commented by エリコ at 2013-07-25 08:26 x
田舎暮らしだからってネットの買い物に頼ってしまう私には頭の痛い話題。本当は商店街とか大好きだから、そんなふうにいろいろなお店が消えていくのは寂しい。1万円払ってお店続行計画に参加しようとしためぐちんの姿勢、すてき!それから海外田舎暮らしだからこそ、めぐちん含め本好きの友人にいろいろな本を恵んでもらって、今私の本棚はすごい支離滅裂なの。でも世界がすごく広がったのは確か。
自分で選ばないって
福袋みたいでいいね。楽しみだね。
Commented by titypusprout at 2013-07-25 18:54
エリちゃん
遠くに住んでて、子育てしてたり高齢だったりするとほんとネットはありがたいよね。これは世の中がよくなったことのひとつだと思うよ。わたしこそ、産直や八百屋に行かずについついスーパーですませてしまっているから、ああ!って思うことたびたびです。時間もあって足腰もしっかりしてるのに!(笑)
フランスは市場や小売店が元気なイメージがあるけど、実際はやっぱりきびしいの?
ちょっと前にブクブク交換っていうのに行ったときも思ったけど、ほんと人っていろんなことを考えて、いろんな見方をしていて、自分の見てるものって世界のちっちゃな一部なんだなー、って思った。あたりまえか!で、最近はすっかり他人の目体験に夢中な私です。内田洋子さんの本、エリちゃんも好きだと思う!
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